コラム・エッセイ 介護士

利用者にタメ口を使って介護をする理由。

2021年12月28日

「利用者様にタメ口を使ってはいけません。」

私も頭ではわかっています。なのに、私はよく利用者さんにタメ口を使ってしまいます。

利用者さんにタメ口を使わない介護士で上手くコミュニケーションとれている方いますか?

言葉遣いによって錯覚を起こす脳。

敬語で話しかけて嫁と間違われる女性介護士

認知症の方が暮らす高齢者施設でよく見かけるのが、女性介護士が女性利用者に敬語で話しかけて、「嫁」と勘違いされている場面。

例えば「お風呂入りに行きましょうか」と声を掛けて、「私はいいわ(あんた先に入ってきなさい)」的な返事をされているんですよね。

旦那のお嫁さんにこんな感じで言ってたんだろうなって想像できて面白いんですけど、

このような関係になってしまうと、明らかに利用者さんがその場をコントロールする側にいるので上手く介護できません。しかし、そうさせているのは女性介護士の言葉遣いのせい。

嫁と間違われてしまう理由は3つあって、

一つ目、その利用者さんは自分が施設にいることを理解できていない点。

二つ目、女性介護士が敬語で話しかけた点。

三つ目、話した内容が「お風呂に入ってください」だった点。

自分が記憶喪失になったとして、敬語で話かけてくる人がいたら、身内か他人どっちかで言ったら他人じゃないですか。

だけど言ってる内容が「お風呂に入ってください」というパーソナルな話題。他人がいきなり近づいてきて「お風呂に入ってください」なんて言われることはないので、その人は少し身近な存在のような気がしますよね。

「お風呂に入ってください」なんて言う他人、家の中で敬語で話しかけてくる女性なんてお嫁さんくらいしかいません。

だから、敬語を使う女性介護士はお嫁さんと勘違いされて上手くコミュニケーションがとれないことが多いと私は考えています。

マナー講師的な人の場合、利用者さんと話す内容は「今日はお天気いいですね。」「ご機嫌いかがですか?」といった他人同士がする会話をしているはずです。だから、利用者さんと初対面でも会話が成立するんです。マナー講師が「今からお風呂に行きましょう」なんて言ったら反応は全然違ってくるはずです。

せいぜい「お風呂の準備ができました。今から入浴されますか?」くらいのことを言って、機嫌のいい利用者さんが素直に入ってくれる感じでしょう。(施設での対応をすべて旅館風に変えて旅館だと錯覚させるとどの程度利用者さんが言うことを聞いてくれるのか一度試してみたい。)

認知症の人はそこまで考えられないと思われるでしょうし、私もそう思っていますが、その反応は考えたうえではないんですよね。経験により引き出される条件反射に近い反応だと思います。

認知症の人はすぐ忘れてくれるからって、本人の前で失礼なことを言う介護士がいるんですけど、そういう介護士がいると利用者さんの表情も反応も悪くなってしまうので、あれだけは本当にやめてもらいたい。ほかの介護士まで言うことを聞いてもらえなくなります。

敬語を使って上手なコミュニケーションをとる方法

「私は絶対にタメ口を使いたくない」という真面目な介護士さんはどうすればいいかというと、

施設を利用されている方って基本不安だと思うんです。だから安心感を与えてあげる言葉かけを意識すればいいと思います。

お医者さんに「お薬出しましょうか?どうしますか?」って言われたらイヤじゃないですか?

お医者さんには「この薬を1日3回飲んでください。」「それでよくならなかったらまた来てください。」って言われた方が安心感がありますよね。

で、介護士が利用者さんに薬を飲んでもらいたいとき、自分をどういう存在として捉えて物を言っているかを考えないといけないんです。(ブログを書くうえでも私はどういった立場から言っているのかをよく考えるしすごく重要なことだなと最近思ってます。)「薬を飲んでください」なのか「薬を飲みましょうね」なのか。

おそらく、「タメ口」or「敬語」ではなく、安心感を与えられる言葉かけが出来ているかどうかが大事。

利用者主体を大事にして利用者さんが選べるようにするのも素晴らしいですが、それも「時と場合」に応じて使い分けられないといけないんですよね。

相手が私を信頼してくれているのか、どこぞの誰ともわからず不安がっているのか、による言葉の使い分けが必要。

私はよく現場で言葉遣いを変えて反応を見るんですけど、ある利用者さんは夜中に目が覚めたときに敬語で話しかけるとものすごく不安がって混乱するんです。「自分も相手を知らないし、相手も自分のことをよく知らない」と思い不安になっている気がしたので、「私はあなたのことをよく知っていますよ」という体でその利用者さんがよく使う方言や言葉遣いを真似てタメ口で会話をすると割と落ち着いた表情をしてくれます。

タメ口を使う理由はどうあれ第三者に与える印象はよくないらしい

タメ口を使っている場面で直接注意されたことはありませんが、どの職場でも話題にあがるんですよね。

タメ口禁止派の人間から見ると、上手くコミュニケーションを取れているから直接は注意しにくく、遠回しに言うしかないんだと思います。

そして、私が色々考えたうえでタメ口を使っていたとしても、第三者にはタメ口で私が利用者に話しかけている姿しか見えません。

だから、どんな理由であろうとタメ口で利用者に声を掛けている介護士は一瞬を切り取られてしまうと良い印象はもってもらえないんです。

理由を考えたこともなく「タメ口はよくない」と思い込んでいる人には、間違った行為にしか映りません。

しかし、ちゃんとした理由があるんですよっていうのが今回の話し。

(これを現場で言えればいいのですが、口頭で説明するっていうのが私にはできないんです…)

私がタメ口を使う理由は錯覚させたいから

こうやって文章に書きながら思考を整理して、私がタメ口を使う理由が明確になってきて、あぁだから私はタメ口を使って介護するんだなって今納得しながら書いています。

なぜ私が利用者にタメ口を使うかというと、錯覚させたいからなんですよね。

パーソナルな会話をタメ口で交わすことによって、身近な存在だと認知症の方の脳は錯覚してくれることが多いんです。

状況に応じて言葉遣いを変え、錯覚してもらえるように私は演じているということ。

食事やトイレや入浴といった、パーソナルな会話をするときに、子どもや孫のような身近な存在にあえて錯覚させるようにタメ口を使っています。それが私が利用者さんにタメ口を使って介護をする理由。

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