介護士

介護現場を知らずに接遇マナーは知り得ない。

2017年2月26日

 

 

これから書くことは、私が働いていた重度障害者が暮らす施設での経験をもとにしているので、被介護者が高齢者と障害者でも違うでしょうし、ヘルパーやデイサービスといった事業所の違いでも接遇マナーへの捉え方には違うところがきっとあるだろうと思います。

 

介護現場に持ち込まれる接遇マナー。

いつの頃からか介護現場にも接遇マナーが持ち込まれるようになってきました。

介護現場においての接遇マナーというのはまだ新しく、耳にするようになったのはここ数年といったところではないでしょうか。

介護事業が、障害者よりも高齢者をメインターゲットにするサービスへと移り変わってきていることが理由として挙げられます。高齢者はお金になるので、そういったサービス事業者は、高齢者をお客様として扱います。

高齢者=お客様

障害福祉では、人として生きる権利から学ぶので、あまり目にしない考え方です。障がい者はお客様ですなんて言われたことなかったけど、特養から異動してきたお偉いさんは普通に「利用者様はお客様です!」って言ってましたね。

高齢化社会になって、様々な分野が介護ビジネスへ参入してきた結果、私たち介護士はいつしか人と人ではなく、従業員とお客様という関係で接遇することを求められるようになってきました。

介護サービスの一部としてお客様に極上のおもてなしをするようなサービスがあっても構いませんが、全てがそうある必要はないはずです。

介護士が提供するのは、一定の言葉遣いや振る舞いで対応できるような、みなさん同じ内容のサービスではありません。

時には利用者本人ですら気付いていないニーズにも気付いてサービスを提供する必要があります。

それは、おもてなしとは異なるものです。

実際のところ、介護現場に接遇マナーを持ち込んで来るのは、介護現場のことを良く知らない人。

「これからの時代は介護現場にも接遇マナーが必要ですよ。」と介護施設には講演の営業が入ってくるのですが、それを取り入れてしまう施設側も大体が事務所の人間で現場のことを良くわかっていません。

上からの指示として降りてくると現場は付き合うしかないのです。従うのではなく付き合う。「頭には入れておくけれど実行するかどうかはまた別だよね」と思いながら介護士は話を聞いています。

実際に介護をしたことのない人が現場に入ると、大体とても綺麗な言葉を使って話しはじめます。それが美しいと考えるからでしょう。そして会話の内容もお世辞を言ってみたり利用者を喜ばせるような言葉を並べます。

綺麗な言葉を並べて障がい者に話しかける自分に酔っている姿をみると、実際に介護したことないのはすぐにわかります。同じ言葉遣いで返せない障害者を無意識で否定しているのには気づけないんですよね。介護現場での本当の接遇マナーは相手の能力に合わせてわかりやすい言葉で話すことであって、綺麗な言葉を使うだけではありません。

目の前で障害者が奇声をあげて暴れはじめると、側にいるスタッフに視線を送り、助けを求めます。マナーで対処できない汚れ役は介護士に回ってきます。常識の中で生活していれば、その上品な接遇マナーで成り立つでしょうが、施設で暮らしているのにはそれなりの理由があるのです。

自分のマナーをいきなり相手に押し付けるのではなく、まず目の前にいる人が、どのような会話ができるのか、どのように身体を動かせるのかを知ったうえで、その次に言葉遣いや振る舞いを決めるのです。千差万別の対応があるのです。接遇マナーが先にあるのではありません。

介護現場にいる人ならば、そんなことは周知の事実なのです。

現場を知らない接遇マナー業者に振り回されてはいけません。

 

親しき仲に礼儀があれば良い。

入所施設で必要な最低限の接遇マナーは、「親しき仲にも礼儀あり。」

結婚して子供を産んで、ある程度好きなことをして年を取り、後はもう迎えがくるのを待つだけ。そんな風に思えるならば、余生をお客様として扱われながら送るのも悪くないでしょう。

人並みの人生を送っていれば、子供や孫に迷惑を掛けないためだと割り切って、ホテル暮らしのように施設で暮らすこともできるでしょう。

しかし、施設に入所しないといけないような障害者には、親が亡くなれば居場所はそこにしかありません。子どものいない同性愛者の私も同じだから他に思いを寄せる場所がない人の気持ちは想像できます。

接遇マナーというのは、他人に対して行うものです。

接遇マナーに口うるさく言う人にとって施設というのは仕事場でしかありません。仕事が終われば施設を離れ自分の家に帰ります。

介護現場にビジネスマナーを取り入れなくとも、「親しき中にも礼儀あり。」くらいのマナーが最低限できていればいいんじゃないでしょうか。

 

美しさより汚れろ。

介護現場では、接遇マナーをまず初めに覚えたって、利用者が素直にそれに応えてくれるわけではありません。ただ第三者の目には素敵な介護士さんに映るでしょうし、偉い人は喜んでくれます。

お客様としてサービスを受ける利用者自身が、どのようなサービスを我々介護士に求めているのか明確ではないことが多いです。「~してほしい。」という言葉の裏に隠されたニーズが潜んでいることがあります。

目の前の利用者に合った接遇マナーを提供するには、まずは利用者個人を知らなければいけないのです。

私としては、接遇マナーを意識する前に、「相手を知るのと同時に自分を知ってもらう」ことを意識すべきと考えます。介護現場においては、外っ面だけを美しく見せるよりも、どれだけ利用者のために汚れられるかを大切にしてほしい。汚れものに触れもせずに「美しいでしょ?」という人からマナーを学ぶのではなく、汚れ仕事をしながらも佇まいが美しい人からマナーを学ぶべきです。

 

 

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