介護士

認知症高齢者に素直に言うことを聞いてもらいたければ丁寧な嘘のつき方を覚えなければいけません。

 

重度の認知症高齢者は、自分の言動をすぐに忘れてしまいます。

自分の物が無くなったとき、まず身近にいる人を疑うのは誰だってそうですよね。

身近にいる人が視界に入った瞬間、認知症高齢者は「信じられる人」と「信じられない人」とに無意識で分けています。

約二十年間介護現場で働いてきて、「信じられない人」という烙印を押されてしまい、全然言うことを聞いてもらえず困ぱいする介護士を何人も見てきました。

今回は、認知症高齢者に素直に言うことを聞いてもらえる方法を紹介したいと思います。

 

認知症高齢者は第一印象さえ良ければ言うことを聞いてくれます。

認知症の方は、記憶障害で今起きている物事をすぐに忘れてしまったとしても、物事によって植え付けられた感情だけは心に記憶しています。時間を置いたとしても、その人を見た時に受ける印象で記憶された感情が呼び起こされ、感情によって認知症高齢者の言動は決定されます。

認知症の方と会うときは、毎回自己紹介からはじめるつもりで、私はこんな人ですっていうのを覚えてもらうためだと思って接してみてください。そうすれば、あなたの第一印象は、初対面の積み重ねでゆっくりと認知症高齢者のなかで定まっていきます。

反対に悪い印象を植え付けてしまったら、自分の首を絞めることになるので注意してください。

 

「まあええわ、知らんけど…」

想像してみてください。認知症の方に「薬飲んだかな?」と聞かれ、「飲みましたよ。」と答えたときに、「ああ、そうか」と素直に受け入れてもらえるでしょうか?

本人は飲んだ記憶がないから聞いています。そして事実を伝えたとしても記憶は戻りません。誰にどんな返事をもらったとしても、認知症の方が薬を飲んだ記憶を思い出すことはないんです。

このときに一番理想なのは、「この人の言うこと聞いといたらええわ。知らんけど…」と思ってもらうことです。

不信感をもたれていた場合、「飲んでない!!」という返事が返ってくるでしょう。

「飲んだ!」「飲んでない!」の言い合いで時間をとられ、最終的に言われ負けて、偽薬を飲んでもらったりします。一回きりで終わればいいけれど、このやりとりは習慣になってしまって、「怒ってしつこく言えば思い通りになる」ということが無意識に刷り込まれ、最終的には関わる人すべてに対して怒りっぽくなってしまいます。

元々の性格も大きく関係していますが、ボケられてしまった後で性格を直せと言っても無理な話です。だから、こちらが与える印象、言葉だけでなくちょっとした表情や態度など、で相手の態度を変えてもらうように接するのが、認知症の人には効果的です。

認知症高齢者の人と関わるときには、自分の振る舞いがどのような感情を植え付けているかを意識してみてください。

 

嘘は丁寧に。

認知症の方と関わったことがある方にならわかってもらえると思いますが、介護現場では物事をスムーズに運ぶために嘘をつく場面をよく見かけます。

すぐに物忘れするボケた老人だと思って軽々しく嘘をついて接する人もいますが、嘘を事実として受け入れてもらうのは、実は簡単なことではありません。それなりの信頼関係を築いていなければ逆効果だったりします。

嘘を聞いてもらうには、信頼を得られていなければいけません。信頼してもらうのに、一番簡単な方法って実は、常日頃から出来る限り事実を伝えることです。相手は嬉しく思わないけれど良い結果を確実にもたらすことを言えれば一番効果的。「言う側が得しないないこと」と言えばわかりやすいでしょうか。

難しければとにかく「嘘をつかないようにする」ことです。

嘘をつかいないのは簡単なようで意外と難しく、本当に上手な嘘をつけるのはサイコパスくらいではないかと私は思います。

お世辞も過ぎると嘘ですし、相手の気持ちを想像しながら正直に気持ちを伝えるのは、実際やってみるとものすごく人間力が必要だとわかります。

認知症になって思考や記憶の機能が低下していても「心」を失うわけではありません。認知症高齢者は、人の言動に見える不審なところにはとても敏感ですので、不信感を抱かせないために細心の注意を払ってください。

「この人は信じて大丈夫。」そう思い始めると、自分の考えに自信のない認知症高齢者は、わからなくなったり自信がないときに、自分から聞いてくれるようになります。その時に言うことを素直に聞いてもらえれば、あなたは信頼され始めているということです。

そこまで信頼されれば、ここぞというときの嘘が使えるようになります。本当に肝心なタイミングで丁寧に嘘をついて安心させてあげてください。

嘘をつきすぎると「この人は嘘ばかり言う。」という先入観が無意識にすりこまれます。認知症高齢者に植え付けた不信感を消すのは、本当に難しく時間がかかります。

長い目で見ると、言うことを聞いてもらうために嘘をつき続けるよりも、本当のことを伝えて言うことを聞いてもらえるほうが、互いに気持ちのいい関係でいられます。

薬を飲んだのを覚えていない認知症の人に「薬飲んでないから薬ちょうだい。」と言われ、「飲みましたよ。」と伝え、「そうか。」という返事が返ってくる。

本当は、何を言ったって、薬を飲んだ記憶は戻りません。「そうか。」という、一見なんでもない、短い言葉ですが、その言葉が自然と引き出されるのには背景があるのです。

 

 

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