介護士

理想の終末期とは?ただ延ばされた時間を生きる高齢者を見て思う。

愛犬が嘔吐と下痢を繰り返し、どうしていいかわからず、病院へ連れて行きました。

受診結果は胃腸炎で、その後数日で元気にもと通り。そんななか私は、いつか必ず迎える終末期について考えていました。

 

延命するかどうかを決めるのは家族の役目。

もう長くは生きられない状況で「どうされますか?」と聞かれていたら私はどう答えていただろうと。

きっと、冷静を装いながらも頭の中は真っ白で、何も考えず先生に治療をお願いしたと思います。

しかし家に帰ってよくよく考えてみると、少しでも長く生かせてあげるのが良い飼い主だと、どこかで思い込んでしまっているだけのような気がしてきました。

というのも、介護士として働いていると、「寝たきりになったら延命はしないでほしい。」と言っていたであろう人が、終末期に望まない延命治療を受けていることはよくあって。

なぜそうなってしまうのかというと、介護施設では、延命するかどうかを決めるのは本人ではなく家族だからなんです。延命が必要な状態の人に意思を確認することはほぼできないので。

元気なころに「延命治療なんて嫌やからな」って会話は日常でしていたと思うんです。だけど、

実際に家族がそういう場面に直面したときに、まだしてあげられること(延命治療)があるのを知っていたら、「しなくていいです」とは、罪悪感をいだいて言えないんですよね。九十過ぎていれば大往生だと思えますが、七十代だったら、今の時代だと亡くなるにはまだ早いです。もう少し生きてほしと思って「先生お願いします」と言うのが普通のご家族だと思います。しかしその優しさが、点滴となり、気づけば経管栄養となってしまいます。

 

その決断は誰の心を満たす?

相手のためだと思っていた優しさが、ただ自分が悪者になりたくないだけだったなんて考えられませんよね。

わたしの母は、「おばあちゃんから『私が死んだら葬式もやらなくていいし、その辺に遺灰を撒いといてくれたらいいわ』って言われた。」「そんなことできるわけない!って泣いて怒ったわ」って話をしたことがありました。

九十歳を超えたあばあちゃんとしては、嫌味とかではなくて、死んだ自分のためにお金を使わせるのが申し訳ないっていうのを伝えたかったと思うんです。

だけど、母はおばあちゃんの気持ちを頭では理解できても、心が受け入れられなかった。

葬式って、故人のために執り行うものだと心から信じていますが、本当は現世に残された遺族の気持ちを整理するために行っているのだと、少し考えればわかります。

葬式の場合は、亡くなられているので、家族が納得していればいいんです。しかし、延命治療された人は、そこで終わりません。

延ばされた時間をどのような気持ちで過ごせるでしょうか。

寝たきりだとしても、人に声を掛けられ、触れられ、匂いや音を感じて幸せだと思えるならいいんです。

寝たきりでも、ここに居てほしい、目に映っていてほしい、生きていてほしい、という家族の我儘でもいいと思います。

良くないのは、本人が望んでもいないし、家族の我儘でもいないのに延命治療をしてしまった場合。それは残念ですが誰も幸せにしていません。

延命をしないという決断は、決断する人が心に傷を負う覚悟がなければ下せないんですよね。

あるご家族は、正しい判断だと信じて延命治療をお願いしたにも関わらず、延命治療で生かされる親の姿を見て、「こんなことを本人は望んでいなかった。」と後になって気付かれました。

「長く生きれば幸せ」なのではなく「幸せに長く生きる」ことが、私たちの言う「長生きしたい」という言葉の意味なんですよね。なのに極限の状態で選択を迫られると、幸せであるかどうかより、とにかく長く生きられるほうを選んでしまいます。

それでその場は良い選択をしてあげられたような気になりますが、あとになって実際に延命されている人がどんな時間を過ごしているかを知り後悔してしまうのです。

 

余裕があるなら慣れ親しんだ家で最期を。

そういった現実を知ると、延命治療が一概に良いことだとは思えなくなってきます。自宅で看病する余裕がなくて、病院や施設を利用するのは仕方ありませんが、「最期は病院や施設に入れないといけない」という思い込みでしかないなら、最愛の人が慣れ親しんだ家で終末期を過ごさせてあげることも考えてみてもいいはずです。

誰だって本当は最期は家で過ごしたいですよね。家族なんだったらどちらが幸せなのか、本当はわかっているはずです。刷り込まれた現代人特有の習わしを根拠なく人の真似してしまうと後悔してしまいます。

後悔しないためには、すぐにでも家族で終末期について話し合い具体的に決めておくこと。

人生最期の十年でしたいことを今からはじめてしまうこと。

今から過ごす十年間は、人間には取り返せる時間だとしても、犬には二度と取り戻せない時間。

 

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